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隣り合うふたつの影が長く長く伸びている


 ふと普段は見ない奥のコートに目をやった。そして思わず、一瞬目を見開いてしまった。そして思う、馬鹿だなぁと。
 普通はしないだろう。髪の毛が邪魔で暑いからといって輪ゴムでくくったりなんて。(それくらいなら切ってしまえばいい)
 そして、それを見た女の子達は言うんだ。「なにそれー。忍足君かわいー」って。
 その瞬間、ラケットを持つ手に力が入ってしまってロブをしながらのラリー練習だというのに思わず鋭い球を打ってしまったりする。正直、そういう光景は腹立たしくて仕方がない。
 自分に向けるのと同じまなざしを他人に向けると言うだけでもあまり嬉しくないというのに、同じ微笑みを向けているという事実には嫉妬すらを感じずにはいられない。……声には出せず、唇でその名を呼ぶだけしかできない自身に苛立っているだけかもしれない。腹立たしくて仕方がない。



 七時半。
 夏とはいえ、もう外は暗くなっている。
 まだ多くの部員は後片づけをしているが、レギュラーであるために雑用の多くは免れているため早く帰ることができるのだ。
 急がなければ夕食に遅れる、と思うと自然と足が速くなる。この間、帰りが遅くなって、母親に強く責められたことをふと思い出す。
「あ、日吉。なんか急いでるん?」
 この声。極めつけはこの喋り方。
 間違えるはずがない。
「忍足先輩……」
 眼鏡の中の瞳をわずかに動かして、答えを求める。
「別に急いでいませんけど」
 ゆっくりと顔を動かして目と目を合わせるように顔を見つめる。
「そうかー。あ、良かったら一緒に帰れへん?」
 みんな先帰ってん。と言われて、そういわれて初めていつもの三年生のグループがいないことに気づいた。
「あ、はい」
 この微笑みは俺だけに向けられたものだ。これは確信。
「何かしてたんですか、先輩」
「うん、ちょっと教室に忘れ物取りに行っててん」
「それで……」
 なるほどと思う。そうでもなければ、なんだかんだ言っても仲の良いあの三年生達が一人を置いて先に帰ることはしないだろう。
「先輩確か、映画を見るの、好きでしたよね?」
「なんで知ってるん?」
 この問いには答えない。
「最近、何か見ましたか?」
「最近……は試合前やから見てへんなぁ……。日吉は?」
「あ、えと、今更なんですけどビデオでパールハーバーを見ました」
「そうなんやーあれは映画館で見たわー。レンタルで?」
「はい。でも、字幕はなくて吹き替え版だったんです」
 先輩が話しているのを聞いて興味を持って暇を狙ってレンタルショップへ行こうとしていたが、クラブや稽古やでこの間やっと借りに行けたのだ。(本当は映画館で早く見たかったけれど、もうロードショーは終わっていたのだ)
「どうやった?泣けたやろ?」
「泣かなかったですけど……泣いたんですか?」
「泣けへんかったで、で、どうやった?」
「どうって……」
 正直、CGが自然ではないことが気になったし、日本人を侮辱している内容があったような気がする。
「……面白かったです」
 けど、内容の先がよめた。
「そうかー良かった。そういえば、あれってディズニーらしいで。それ友達から聞いたときほんまに?って思ったんやけどインディ・ジョーンズもディズニーやしなーって思ってん」
 にこにこと笑いながら話す先輩の横顔に時折自動車のライトがあたり、なぜかドキリとした。
 夜は人に対して不思議な力を持っていると思う。そしてふと、狼男の存在を思い出した。



「おなか空いたなぁ」
「先輩の好きな食べ物って何ですか?」
「うーん、そやなぁ……サゴシキズシかな。知ってる?」
「すみません、知らないです」
 そして慌てて会話を長引かせるために続ける。
「なんですか、それ?」
「押し寿司じゃなくてサゴシキズシやねんけどなぁ……。今度母親が作ってくれたら持っていくわ」
 笑ってくれた目を見て、ありがとうございますと言う。
 本当は、離したくない、逃がしたくない。けれども、それはできないことで。
 また明日、と言って会釈することしかできないんだ。
 そして手を振って去っていく先輩の後ろ姿を見ることしかできないんだ。




 サゴシキズシが何かわからん!「サゴシキズシ」で調べたら、忍足さん関係のサイトばかりが出てきました。
 で、「さごしきずし」で調べるとおせち料理ばかりが出てきて……。(涙)
 でもなんか、色々検索してたら「さごしは『きずし』にします」と書いてあるサイトがあったので、恐らくそれがおいしい食べ方。
 あーあー。かす汁なら知ってるんだけどなあ。(ていうか、大好物です。LOVE! KASUJIRU!!)
 日忍は、だーいぶ前にリクエストを受けてから、ずっと書こう書こうと思っていました。が、とうとう今になってしまいました。自分的に満足。(書けたから)
 ピヨは、難しいね!なんていうか、彼って何を喋っていたかしら?と考えると「下克上」しか思い浮かばなかったりして、しかも、二年生で、絶対分をわきまえた顕著な子だと思うから難しくって難しくって。(苦笑)
 ええと、タイトルですが、影なんて無いよね!だってもう、真っ暗で、夜なんだもん!(でも、面倒だから変えない)


2004/09/14...MIKO