「きれいですね……」
オレンジ色のあなたが。
花 火
h a n a b i
「室町くん」
クラブが終わって、着替えてたら、千石さんに声をかけられた。
「なんですか?」
制服のボタンを留め終えて、千石さんの顔を見てみると、ニィッて笑ってた。
「今日、ヒマ?」
「はぁ!?」
突然のその問いに、思わず地になって言ってしまった。
「うわ、スイマセン。ええっと、とりあえず暇ですけど?」
「じゃあさぁ」
耳に口を近づけて、ヒソヒソ声で千石さんは言った。
――――――花火、しよ。
自転車に2人乗りして、近くのコンビニまで行って、花火を買った。
そして、千石さんの言うとおりに進んで、河原まで行った。
学校を出たときは、まだ、ほんのりと明るかったはずの空が、もう真っ暗になっていた。
「あ。マッチ忘れた……ましたね」
「ああ、そうか。 でも大丈夫だって。ライター持ってるから」
どうして、持っているかなんて言う、そんな当たり前の問いかけはしない。
それはよかったと、お子さま花火セットに付いていた小さなろうそくに火を付けた。
オレンジ色の小さな光。
千石さんとかぶった。
「きれいですね……」
オレンジ色のあなたが。
「だね」
うんうんって、頷きながら、しようよって、花火を渡してきた。
お礼を言って、花火の先端に火を付ける。
バシュっていう、火がつく音。
ボウボウとなる、花火の音。
花火を振り回してはしゃぐ、千石さんを見てたら、線香花火勝負を突然持ちかけられて、動かないようにそうっとじっとして、2人で勝負した。
煙で、目が痛くなって涙が出そうになった。
そしたら、ソレで目はカバーできないのかーと笑われた。
悔しかったから、頑張って、涙が出そうなのを我慢した。
ようやく、花火もなくなって、2本目のろうそくもなくなって、どちらとも言わずに帰ろうとした。
「室町くん」
「はい?」
「楽しかったね」
「はい」
「またしよっか?」
「はい……でも、その時はみんなでしませんか?」
「ど、して?」
「だって……」
千石さんの独り占めは、なんだか許されないような気がしたなんて言えないから。
「だって、みんなでした方が楽しそうじゃないですか。打ち上げ花火とか」
「そっかぁ」
ポンと、手を打って、千石さんは頷いた。
「でも、室町くんと2人で花火、してみたかったんだよね」
ニィッて、いつもの笑いをして、さあ、かえろっかぁって言って、2人で並んで帰った。
また、千石さんと花火をしたいと思った。
また、2人だけでしたいと思った。
3年(以上)前……。(初めて公開したのは2002/06/05らしい)
………………。
はずかしすぎる。本当に。
恥さらしだ、わ!いいんだいいんだ。わわわたし、まぞっこだから!(ぎゃあ!)
それにしても室町君、元気かなぁ……。(最近彼を見かけないような気がする)
2005/06/26...MIKO