I'm not smoker.


 薄い白色をした細い煙が、上へとのぼっていく。
 ただそれを見つめて。
 何をするでもなく、ただそれを見つめて。
 心の中は空っぽだった。
 考える事が多すぎて、空っぽにするしか方法が無かった。
 そんな空っぽな自分を、見て、他にする事が有るんじゃないかと問いかけて、またぼんやりと、空っぽのまま、このまま、居られればいいと思った。






「ふーじ」
 気がつくと、目の前に英二が居た。
「なに?」
「また…」
 英二が何を指しているのかは分かった。
「なに?」
「たばこ」
「うん」
 僕達ふたりの視線は、コンクリートの床におろした手に有る火のついた煙草と、その箱の間で交じり合っていた。



「なんでさ、煙草なの?」
「どういう意味?」
 深い深いため息を、つく。
「だって、変だよ不二」
「どこが?」
「煙草なんて」
「わけわかんないよ」
「なんか、麻薬中毒者みたい」
「そうかな?」
「そうだよ」
 そして、英二も深く息をはく。
 大きく、息をはく。



     『麻薬中毒者みたい』



「……そうかもね」
「え?」



 吸うわけでもなく、ただ、癖のように煙草に火をつける。
 毎日毎日飽きもせず、その行為を繰り返す。



「不二ぃ」
「なに?英二」
「俺、最近の不二が何考えてんのかわかんないよ」
「それは、そうだろうね。何も言わないから」
「前はもっと笑ってた」
「そうかな?」
 そして、笑って見せる。
「そんなのじゃなかった」
「そうだっけ?」
「……もういいよ」
「ふぅん?」



 苦しい時に、傍にいて欲しいのは、家族でも友達でも恋人でもないと考えるのは間違っているのだろうか。



「ただ……」
 うまく言葉を紡ぎ出す事が出来ない。

「ただ今は、一人で居たいんだ」
 声がかすれる。馬鹿みたいだと思う。



     「ごめん」



 謝って、何になるのだろうか。
 謝って、何が変わるのだろうか。
 けれど、謝る事で自分自身が罪から開放されたような気になる。



     「ごめん」



 こんな姿を、誰にもさらしたくなかった。
 英二には、さらしたくなかった。




 書いた日付(アップした日付か)が2003/03/29ってなっていた。
 えええ!本当に一年以上前じゃないかッ!

 ええと、自分で書くのもなにやら恥ずかしいのですが、この話は好きです。
 当時の後書きに
 「不二さんは、自分の気持ちを外に出すことのできない可哀想な人。
  好きだから全てを知りたくて、好きだから何も言えない、そんな二人。」
 と書いてあったのですが、その通りだなぁと、改めて思いました。
 そんなことすっかり忘れてたよ!

 不二さんは、きっと菊丸が好きで好きで仕方がないし、菊丸も同様に不二さんが好きで好きで仕方がないんだと思う。
 それが、恋愛感情かというとそうじゃないって言うのが私の考えで、きっと友情以上恋愛未満くらいの関係が理想です。



(ていうか、さっき気付いたんだけど、タイトルが「 I'm not smorker.」になってたよ!ばっかでーい)


MIKO ...2004/08/17