ツンとした、独特のにおいが鼻につく。
これが図書館のにおいなのか、本のにおいなのか未だによく分からないでいる。
昔から、図書館には好んで行くことはあまりなかった。
けれど……。
図書館での密会
(やっぱり)
そっと、足を忍ばせて近づいてみる。気配を消すことくらい、軍人だからある程度は出来る。
予想外だったのは、グウェンダルが眠っていたこと。
東方の書物が並ぶ本棚の前に座り込んで、彼は寝息を立てていた。
珍しいこともあるものだと、ぼんやりと思う。普段、そつなく全てを完璧にやりこなす彼が居眠りしている様子を見るのは初めてかもしれない。
前にかがみ込んで、じっと顔を見てみる。目が覚める気配は一向にない。
こんなに無防備で良いのかと思うが、それだけ安心しきっているのは良いことかもしれない。それだけここも今は平和だと言うことだ。戦場ではこうはいかないだろう。(もちろん、こんな様を師に見られたらただじゃすまないと思うけれど)
少し開いている唇をしばらく見つめた後、無意識に手が、そちらに向かってしまった。
そっと右手の親指をグウェンダルの唇にはわせて、少し動いた彼に思わず肩がビクリと動いてしまった。
瞼が動いて、目を覚ました彼は驚いたように俺の顔を見た。
「おはよう、グウェンダル」
冷静を装って、微笑んでみる。
小さく頷いて、彼はいつもの仏頂面に戻って、それから立ち上がった。
「これから、仕事?」
「ああ」
しゃがみ込んだままでいる俺に返事を返して、彼は立ち去っていった。
ぼんやりとその後ろ姿を見送った後、右手の親指で自分の唇をなぞってから、ほんの少し罪悪感にさいなまれた。
コンラッドは、あと一歩が踏み出せないんだと思う。(なぜなら、踏み出してしまったらもう取り返しのつかないことになりそうだから)
グウェンダルは、されるがままに、流れのままに、うっかり身を任せてしまうんだと思う。
次に図書館で彼らを書くなら、もっと勉強してからエロが書きたい。今回もエロエロ……と思って書き始めたけど、エロり方が分からないと言う未熟者のため断念。
無言でセックスしてればいいと思う。それか、普段通りの会話をしながらすればいいと思う。
それが欲望なのか、そうじゃないのか、
2005/06/26...MIKO