赤とオレンジを混ぜたような光が窓から入ってくる。
そして、うすぐらい部屋に影を落とした。
つ め た さ と あ た た か さ の あ い だ
昔、なんとなく夕焼けが怖かった。朝焼けが気持ち悪いと言った少年の話を幼い頃読んだことがあるが、朝焼けよりも、夕焼けが怖かった。吸い込まれそうになるのだ。気を抜くときっとこの世ではないどこかに吸い込まれてしまうような気がしていた。
もちろん、今まで何年も生きてきて、何度も夕焼けを見たが、吸い込まれてしまったことはない。それにそんな非現実的なことが起こらないということくらいわかっている。けれど、本能的に夕焼けは怖いのだ。
机の上に乗りかかって、唇を合わせている少年をぼんやりとながめた。
彼はなぜ、唇を合わせているのだろうか。
不快感はない。
けれど、いつもなら唇の味とともについてくる甘い香りは、今はない。
むさぼるように、唇を吸う。
彼はいったい、なにに飢えているというのか。彼はいったい、なにを欲しているというのか。
ようやく彼は唇を離して、そのうすい唇をぎゅっとむすんだ。
その瞳には、いつもの鋭さと、それからいつもとは違うゆらめきがあった。
気がつくと。彼は机からおりて、赤い上着をひるがえし、部屋から出ようとした。
まるで、逃げるように。
「まて」
気づくと追いかけていて、彼は逃げようとした。
けれど、腕を捕まえて、こちらを向かせる。
(きっと逃げるつもりはなかったのだ)
そうでなければ、今捕まえることはできていないはずだ。彼は捕まえてほしかったのかもしれない。
「なにがあったんだ」
肩に手を置いて、問いかける。
そう。何もなければ、彼がこんな顔をするはずがない。
今にも泣きそうな……そこまで思って納得する。そうか、泣きそうなのか、と。
「鋼の?」
やれやれと、ため息を出すように名前を呼んで、少しだけ腰をかがめた。
すこしでも、視線が近くなるように。
すると突然、勢いよく腰にしがみついてきた。
あまりのことに、おどろいて、しばらく手が中に浮いたままになってしまったが、それから彼の背中に手をまわしてゆっくりとたたいてやる。
彼は泣いている。
こんな姿を見るのは初めてだ。
しばらく、そのままでいたが、それから、ゆっくりと腰をかがめて、彼と視線の高さを同じにする。
彼はうつむいていて、顔が見えない。
「鋼の?」
彼が欲しているのは、愛なのかもしれない。
それは肉親への愛なのか、それとも別の愛なのか、それはわからない。
親指で涙をぬぐってやると、手をはねつけられた。
らしいと思うと、笑いがこみ上げてきた。
「やめろよ」
ようやく顔を上げてしゃべったと思ったらこれだ。
泣き腫らした目をしているくせにと思うが、それは言わない。
「おどろいた」
その言葉に、少年はいぶかしげな顔をする。
「なにかあったら、また来なさい」
そう言って、触れるか触れないかのキスをした。
驚いた顔のままこちらを凝視している少年を見ながら言葉を続ける。
「いっぱいなやんで、いっぱい大きくなればいいんだから」
「だ……」
「君が小さいといっているわけではない。君はもう立派に大きいよ」
これは決して身長のことを言っているわけではない。
「けれどまだ、十六歳なんだから」
な?と言うと、驚くほど素直に彼はうなずいた。
「たいさ」
「ん?」
「ごめん」
「どうした」
「急にごめん」
気にしていないと続けようとしたが、そういうわけにもいかない。気にならないわけがないからだ。
だから言葉の代わりに、その頭をなでる。
また泣き出した彼をどうしようかと、ぼんやり考えた。
おかしいなあ。王道はロイエドだよね?あれ?(謎)
私が妄想する大佐とエドの関係はこういうの。
きっとエドが泣くのは大佐の前だけでだと思う。アルの前ではお兄ちゃんだからと言う理由で弱いところは見せられないだろうし、他の人もいろんな理由で駄目なんだと思う。
エドはそれから、同じような理由で、行き場のない感情にブチ当たったときは、思いっきり大佐のお腹を殴ればいいと思う。
大佐はそのパンチを受け止めて、エドを抱きしめればいいと思う。
2005/06/26...MIKO